確認記事

いまの請求作業を、担当と渡し方で書き出す

公開日 / 編集: 村上祥太

請求書ソフトを比べる前に、いまの請求作業を「担当」「受け取るもの」「渡すもの」「止まる箇所」の4列で書き出します。機能の一覧から入ると、使わない機能に目が向き、引継ぎで止まる箇所を見落とすためです。

機能一覧より先に作業表を作る理由

請求書ソフトの公式ページには、帳票の作成、送付、CSV取込み、権限、入金管理といった機能が並びます。どれも請求業務に関わる機能ですが、自社にとってどれが必須かは、機能の説明を読んでも決まりません。

決め手になるのは、いまの作業のどこで人が入れ替わり、どこで待ちが発生しているかです。たとえば、見積を作る人と請求書を作る人が別なら、見積の内容を請求書へ移す方法が比べる対象になります。1人ですべて作っているなら、その行は比べる対象から外せます。

作業表は、ソフトを選んだ後の設定にも使えます。誰にどの操作を許すか、どの帳票から作り始めるかを、表を見ながら決められます。

4段の流れに沿って書く

作業表の行は、請求業務の4段に分けます。各段で「決めること」「次へ渡すもの」「ここで止める条件」は、次の図のとおりです。

  1. 見積を作る(1段目)

    決めること
    何を、いつ、誰の名前で見積もるか
    次へ渡すもの
    取引先に出した見積の条件(品目・単価・有効期限)
    ツールで確かめる設定
    見積書の作成と、納品書・請求書への変換
    ここで止める条件
    見積を作る担当と、条件を変えてよい人が決まっていない
  2. 納品を確かめる(2段目)

    決めること
    何をもって納品済みとし、誰が確かめるか
    次へ渡すもの
    納品済みの記録と、見積から変わった点
    ツールで確かめる設定
    納品書の作成、見積から転記する項目
    ここで止める条件
    納品を確かめた人が、請求の担当へ伝える方法がない
  3. 請求を送る(3段目)

    決めること
    誰が作り、誰が確かめ、誰がいつ送るか
    次へ渡すもの
    送付済みの請求書と、送った方法・日付
    ツールで確かめる設定
    送付方法(メール・郵送・PDF)、確認や承認の設定
    ここで止める条件
    送る前の確認を誰がするか、送付の責任者が決まっていない
  4. 入金を確かめる(4段目)

    決めること
    誰が、何と照らし合わせて入金済みにするか
    次へ渡すもの
    入金の確認結果と、未入金の取引先の一覧
    ツールで確かめる設定
    請求書の状態の管理、入金明細との照合、出力
    ここで止める条件
    未入金のときに誰が取引先へ連絡するか決まっていない

1行に書くのは1つの受渡しです。「請求書を作って送る」のように2つの作業をまとめると、作る人と送る人が違うときに見分けられなくなります。

作業表の例(架空の事務所)

架空の例

次の表は、営業・現場責任者・事務の3人で請求をしている架空の事務所を想定した記入例です。実在の事業者の作業ではありません。

表は横にスクロールできます。

作業 担当(役割) 受け取るもの 渡すもの・渡し方 待ち・止まる箇所
01 見積 見積書を作って取引先へ送る 営業 取引先からの依頼内容 見積書のPDFを事務へ転送 値引きを誰が認めるか決まっていない
02 納品 作業完了を確かめる 現場責任者 見積書の写し 完了の連絡をチャットで事務へ 連絡が月末にまとめて届く
03 請求 請求書を作る 事務 見積書PDFと完了の連絡 作った請求書を営業へ見せる 見積書から手で転記している
03 請求 請求書を送る 事務 営業の確認済みの返事 メールでPDFを送付、一部は郵送 営業の確認待ちで数日止まる
04 入金 入金を照らし合わせる 事務 通帳の記帳 未入金の一覧を営業へ 未入金の連絡を誰がするか曖昧

この例では、「止まる箇所」に書かれた4つが、ソフトを比べるときの質問になります。転記の手間は見積から請求書への変換、確認待ちは確認者の権限と承認の方法、郵送は送付の費用、未入金の連絡は入金確認の担当の決め方に対応します。

書くときに外すもの

作業表に、実際の取引先名、請求金額、請求書の画像を貼る必要はありません。書き出したいのは流れであって、取引の中身ではないからです。社内で共有する表や、ソフトの試用に持ち込む資料に取引の情報が入ると、見せてよい範囲を別に考えることになります。

「何通くらい送っているか」も、この段階では「少ない・毎月同じくらい・月によって違う」の粒度で十分です。料金の数え方が製品ごとに違う(作成した数で数える製品と、送付した件数で数える製品がある)ため、正確な件数は、比べる製品が決まってから数え直します。

作業表から、公式へ聞く質問を作る

「止まる箇所」の列を上から読み、それぞれを「この状態を、ソフトの設定で解消できるか」という質問に言い換えます。

  • 「営業の確認待ちで止まる」→ 作成する人と確認する人で使える操作を分けられるか。送る前の承認を記録に残せるか
  • 「見積書から手で転記している」→ 見積書から請求書へ変換できるか。どの項目が引き継がれるか
  • 「一部は郵送」→ 郵送代行があるか。1通あたりの費用はいくらか
  • 「未入金の連絡を誰がするか曖昧」→ 請求書ごとに入金済み・未入金を記録できるか。ただし、連絡の担当は社内で決める

最後の例のように、ソフトでは解消しない箇所も残ります。担当を決めていないことは、どの製品を選んでも設定では埋まりません。質問にする前に、社内で決める項目として分けておきます。

言い換えた質問は、確認メモのツールの設問に当てはめると、比較表で見る行と一緒に整理できます。流れの各段の詳しい説明は見積から入金確認まで、どこで引き継ぐかにあります。